日本で承認されたのに『新薬が発売できない』異変 割安な薬価を欧米製薬が警戒
日本国内で厚生労働省の製造販売承認を取得したにもかかわらず、薬価が決まらず発売が大幅に遅れる異例の事態が、がん(乳がん)や生活習慣病(2型糖尿病)などの主要領域で発生しています。
従来のドラッグ・ロス(欧米の新薬が日本で申請すらされない問題)に加え、「承認されたのに安すぎる薬価を懸念して発売されない」という新たなリスクが顕在化しつつあります。
要点を簡潔に整理します。
1. 事態の概要と背景
承認済み新薬の収載・発売見合わせ
通常、厚労省の薬事承認から薬価収載(保険適用)までは原則60日〜遅くとも90日以内(年4回の収載機会)で行われます。しかし、海外大手製薬企業(米欧グローバルファーマ)が開発した新薬において、提示された日本の薬価案が低水準すぎることを理由に協議が難航・停滞し、発売の見通しが立たない事例が浮き彫りとなっています。
米国の新政策「最恵国(Most Favored Nation)薬価制度」の影響
米国政府が連邦公的保険(メディケア等)における医薬品価格の参照先として「先進国の最低価格帯」を基準(最恵国価格)とする政策・規制議論を強めています。これにより、日本で割安な公定価格(薬価)を受け入れると、巨大市場である米国本国での販売価格引き下げ圧力に連動してしまうため、グローバル企業が日本での先行発売を警戒・見合わせる動き(日本スキップ/ロープライス回避)に直結しています。
2. 医療現場と製薬業界への影響
患者への最新治療提供の停滞(実質的な「ドラッグ・ホールド」)
海外の標準治療で用いられる革新的新薬が、PMDA(医薬品医療機器総合機構)の安全・有効性審査を通過しているにもかかわらず、医療現場で患者に処方できない「絵に描いた餅」状態が続いています。
日本の医薬品市場の地盤沈下
毎年の薬価改定や新薬創出加算の適用条件厳格化に伴い、日本市場の魅力低下が指摘されていましたが、米国の薬価参照制度と相まって、日本市場への新薬投入順位がさらに後回しにされる懸念が高まっています。
厚生労働省および中医協(中央社会保険医療協議会)においては、革新的医薬品の価値を適切に評価する制度見直し(イノベーションの評価と薬価維持)の議論が一段と緊迫化しています。
